里めぐりも黒味岳の登山もとても魅力的でしたが、他の地域との差別化を図っているのはやはり縄文杉なのではないか、と今回ゴールデンルートを避けたことで逆に強く感じました。いわゆるゴールデンルートとされていない、屋久島の「新たな魅力」には同時にツアーのガイドの質の向上、自然環境を配慮した設備の充実など、観光に対応するための課題がまだまだあるように思います。
特定観光地への集中からの分散のソリューションとしての里山ツアーという考えは確かに現地の地域活性化にもつながる着地型観光、理論的には素晴らしいと感じました。今回は一種修学旅行という形だったからこそ初回で里めぐりツアーに参加しましたが、これを個人で、一観光客として初めての屋久島で経験するのは、その内容や情報量の少なさ等の面から難しいのではないかと感じました。
今回のメンバーにはいわゆるリピーターも数名いたため、初回来訪者の私と視点が違う意見もあり、とても面白かったです。彼女等は去年の、いわゆるゴールデンルートの合宿で「もう一度来たい」と感じたからこそ今年の参加を決めたのだと思います。私は今回のゴールデンルートを避けた合宿で、屋久島と他の観光地との差異をあまり感じませんでした。もちろん黒味岳で見られる植生のなかには屋久島の固有種や、花崗岩の上にある薄い土の層から生える木々などがあり、これらは、この島でしか見ることのできないものです。しかし、本土の他の山でも似たような植生を見ることができる、そういった場所に比べて観光地として整備があまりなされていないなどといった印象を受け、唯一性のようなものをあまり感じることができませんでした。
私は、やはり縄文杉は屋久島の唯一性を高める一装置であり、一種屋久島の記号とも言えるのではないかと思います。仮に縄文杉が無かったらそもそも屋久島に来ない観光客もいるのではないかと感じました。実際の縄文杉がいまはデッキからただ見るだけだとしても、「縄文杉に行った」ことがひとつの価値として成立し得る現状があるように感じます。たとえ縄文杉が数年後朽ちて倒れたとしても、その切り株や場所が縄文杉跡地のような形で意味を成すことも考えられます。
縄文杉をはじめとするゴールデンルートは初回観光客を呼び込むための一種の装置であると考え、ここで屋久島の魅力を知って再訪するリピーターに、里めぐり、黒味岳、海などの分散したルートを提供していくことがキャパオーバーな集中への対策として有効なのではないかと考えました。
3年 町田 恵
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