2015年10月11日

里のエコツアー、一湊の場合

屋久島環境文化財団は「屋久島環境文化村構想」(注1)を推進する組織として平成5年3月に鹿児島県、屋久島町(当時は上屋久町、屋久町)の出資で設立された公益法人だ。自然と共生する新しい地域づくりを目指して財団が実施する事業の1つに「里のエコツアー」がある。里のエコツアーはホストの地域づくり支援とゲストの環境学習を目的に平成23年度から宮之浦、平内、吉田、中間集落で開始された活動で、語り部と呼ばれる地域住民が案内役となって集落の歴史、文化、産業を紹介する。今回私が参加したのは今年度新しく加入した一湊集落のエコツアーだ。11人の参加者に3人の語り部と村長が付いて始まった里めぐりは、絞め殺しの植物として有名なガジュマルが根を下すガジュマル通り、屋久島の特産品「サバ節」の工場、国指定天然記念物のヤクシマカワゴロモが生息する一湊川など集落の名所に寄り、最後は西郷隆盛が奄美大島へ向かう途中で褌を洗ったとされる布引の滝で記念写真を撮って終了した。語り部を先頭に終始和やかな雰囲気で続いた案内を通して地域住民の日常に触れることが出来た。しかし縄文杉、白谷雲水峡といった屋久島のゴールデンルートから観光客を分散させるにはまだ弱い存在に感じた。

先程述べたように一湊集落は今年度から里のエコツアーの受け入れを始めた為体制、制度が集落にまだ浸透していないのだ。私達のグループを担当してくれた語り部は集落の伝統行事、昔遊びについて詳しく教えてくれた反面、歴史や生物など専門的な話になると内容がぼんやりしていた。一湊川にてヤクシマカワゴロモが国指定天然記念物であると共に一湊川の固有種であることまでは話してくれても、語り部にその姿を見た人がおらず話はそこで終わってしまった。参加者が里めぐりに期待するであろう地域住民との交流も少なかった。ここにツアー料金1500円を考慮すると決して満足出来る内容ではなかったのが実際だ。ツアー料金に関して財団の方は料金の90%を集落に落とすことを考えた結果だとおっしゃっていたが、これではまた訪れたいと思えない。リピーターを獲得する為にも参加者の満足度を上げるには里めぐりに対する地域住民の意識を高め、語り部の教育と交流活動の増幅が必要だ。また近隣の集落とセットにした里めぐりを打ち出すことや、ツアー料金を抑える代わりに地元産業と協力して参加者にお金を落としてもらう仕組みを作ることも考えられる。例えばサバ節工場の商品販売にもっと力を入れるのはどうだろうか。私はサバ節工場・丸勝水産でサバ節を試食した時その味に感動したと共にその場で商品購入出来ることを里めぐりの終わりに知ってとても悔しい思いをした。

一湊集落を訪問して気になったのは里めぐりの内容だけではない。集落にあまりにも人気がなかったのだ。若者はもちろん高齢者を見かけることも少なく、かつて商店が立ち並んでいたという通りは寂れていた。集落で人口減少が進んでいることが明らかだった。北陸新幹線で話題の石川県も金沢市や和倉温泉から離れた能登半島北部では人口減少による限界集落の存在が少なくない。
輪島市大釜では2006年5世帯10人の住民が土地を売却し集団移転する計画を立てたが買収に応じたのは産廃処理業者だった為、観光に悪影響であると2011年輪島市議会は計画反対の意見書を全会一致で可決した事案もある。輪島市と同様に豊富な自然環境が観光に繋がる屋久島もこのような形での集団移転は難しいだろう。よって島外の人に里のエコツアーなどを通して集落へ来てもらうことが重要だ。一湊集落にとって里めぐりを盛り上げていくことは地域づくりだけではなく厳しい現状を打破するきっかけにもなる。

地域住民の中には自分の日常に観光客が入ってくることを良く思わない人もいるかもしれないが、住民の団結そして財団、近隣の集落と協力を元にこれからも一湊集落の魅力を発信し続けて欲しい。



(注1)屋久島の豊かな自然とその自然の中で作り上げられてきた自然と人間の関わり(環境文化)を手掛かりに屋久島の自然の在り方や地域の生活、生産活動を学ぶ「環境学習」を通して自然と人間の共生を実現しようとする新しい地域づくりの試み




・ 公益財団法人 屋久島環境文化財団 http://www.yakushima.or.jp/ 参照

交流文化学科2年 橋本 あかり


posted by masutanis at 20:48| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | kanko14 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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