2015年09月21日

屋久島ツアー YNAC松本毅さんのお話しを伺って

『分散を妨げるもの』をテーマとして9月14~17日までの屋久島ツアーに参加をしてきました。このツアーの直前に体調を崩してしまったため、正直行く前は乗り気ではなかったのですが、合宿を終えた今は「最高に充実していて楽しかった!」が率直な感想です。前記したテーマを掲げて島を回ったことで、この旅がただの「旅行」ではなくなり、自分の脳内でぐるぐると考えながら歩くことが出来たために満足感を感じることが出来たのではないかと思います。屋久島なんてどうせ歩き回って疲れるだけだろうという私の予想を見事に打ち砕いた出来事のうち、このブログでは、特に印象的で屋久島観光について考えさせられたYNAC代表取締役・松本毅さんのお話しを中心に書こうと思います。

1日目の夜、宿泊した研修センターの中にある大きな視聴覚室にて松本さんをお招きして「ゴールデンルートからの分散」というタイトルの元、講義をしていただきました。
YNACはYakushima Nature Activity Center(屋久島野外活動総合センター)の略で、代表取締役である松本さんが1993年に創設した会社です。彼は屋久島出身ではないにも関わらず、YNACと同時に屋久島海洋生物研究会を発足させているほど、屋久島を知り尽くしていらっしゃる方でした。屋久島の魅力に惹き込まれ、その「本当の」魅力を世に広めたいと考えて活動をなさっている方であるのだということが話全体を通して受けた印象です。

世界遺産に登録されたのは縄文杉が評価されたからだと勝手に考えてしまいがちですが、実はそれだけではないことも詳しく教えていただきました。屋久島は一つの島でありながら様々な顔を持つ島です。海岸部は亜熱帯気候で九州や沖縄と同じような気候であるのに対し、中心部は標高が2000mほどで高いため亜高山帯地帯となり気温は北海道とほぼ同じなのだそうです。そのため、「屋久島には日本列島すべての自然が凝縮されている。」というような言葉を島のあちこちでよく耳にしました。1993年に屋久島が世界遺産に登録された後、意外にも観光客は増加せず、むしろ噴火などの災害により減少したということも驚きでした。観光客が急増したのはジブリ映画「もののけ姫」公開後だったそうです。

屋久島への観光はどうしても縄文杉を見に行くという事とイコールに結びついてしまいがちですが、縄文杉は島の住民からすれば、初めて東京に来た人が東京タワーに行かなくては!と思うのと同じように見えるそうです。東京タワーに行けば東京らしさは確かに味わえるけれど、もっと他に行く価値のある東京らしい場所がある。「そんな風にイメージしたらわかりやすいでしょ?」と松本さんは笑いながらおっしゃっていました。その例えは非常に想像しやすく、観光客が縄文杉ばかりに行ってしまうために他の場所の魅力に気が付けない島の方々のもどかしさが少し自分に引き寄せて感じる事が出来ました。

松本さんのお話の中で興味深かったのは観光客の「観光の仕方」に対する指摘でした。YNACはツアーガイドをする際、仕組み、体験、癒し、の3つのことをお客様に大切にしてもらいたいと考えているそうです。

まず、【仕組み】とは、前述したような屋久島の気候や植物の仕組み、「なぜここにこのような植物が生えるのか?」と考え、学びながらトレッキングをすることを指します。例えば、屋久島でしばしばみられる着生(木の上から別種の植物が生えること)は栄養豊富な苔があるおかげだということや、屋久島は植物にとっては根をはりづらい過酷な場所で、だからこそ樹木の年輪は密度が濃く、また長生きするのだということを私たちは教えていただきました。

第二に、【体験】とはそのままの意味で、実際に体で植物に触ったり、生き物を見たり、雨を浴びたりすることを指します。実際、私も黒味岳登山の際に葉の後ろに毛が生えた面白い植物に出会いました。標高が高くなるにつれてその毛は長くなりふさふさとしていてまるでフェルトのようでした。ガイドさん(屋久島のやっくんというニックネームの方でした)によると、この葉は冬になると毛を内側として丸くなり、寒さや雪によって葉が死なないようにするのだそうです。そのために標高に比例して裏側の毛がより長くなるのだと教えていただきました。

最後は、松本さんが最も大切だと言っていた部分で、【癒し】です。これは屋久島を歩くことでここでしか味わうことのできない神秘的な自然を感じることを指します。屋久島に行く際、観光客の多くは「欲張り」になってしまうのだと松本さんはおっしゃっていました。あれもやりたいし、これもやりたいし、となると予定を詰め込みすぎてしまい、結果的に屋久島に行ったという事実だけに満足してしまうのだそうです。そうではなくて、登山を例に挙げるならば、山頂や縄文杉などのゴールへ向かうまでのプロセスが一番大切なことであるということです。途中で出会った不思議な形をした杉や多様な種類の苔、休憩時間に飲んだ川の水の味や柔らかさなどが本当の意味での「癒し」を与え、もう一度屋久島に行きたいという気持ちを起こさせるのだとおっしゃっていました。また、癒しを充分に求めない結果として、ガイド離れが起こったともおっしゃっていました。現在、屋久島に関する詳しいガイドブックが多く出版されています。そのことによって、人々は1万円ものお金を払ってガイドを付けるより、
1000円のガイドブックで済ませてしまうのだそうです。結果として、島の人ならではの情報や、森の楽しみ方を知ることなく、ただガイドブックに載っている情報の確認で終わってしまいます。そうではなく、島の事に詳しい専門家であるガイドさんについていただくことで、より屋久島の魅力を肌で感じることが出来ます。

話を聞いていて、それは、美術館で音声ガイドを借りる行為に似ているなと思いました。自分の目で見たままに絵を鑑賞するのも一つの楽しみですが、音声ガイドは、作品そのものの解説のみならず、画家の生い立ちや時代背景、またその作品に合った音楽を流してくれる場合もあります。その付加的情報はただ絵を見て通り過ぎるよりも多くの満足感を得られると思うのです。ガイドしばしば、松本さんはお客様から、「見ておくべきところはありますか?」と聞かれるそうです。彼は、その質問に対して、「それはあなたの行きたいと思うところです。」と答えるそうです。加えて「たまには一日なにも予定を入れないで海辺でのんびりと過ごすのもいいですよ。」とアドバイスなさるとおっしゃっていました。なぜなら、屋久島に来て本当に良かったなと満足感を得られる時間を過ごしてもらいたいからだそうです。本当に、島の魅力を知り、それに対して誇りを持ち、また愛しているからこそこのような答えになるのだろうと思いました。初日に、松本さんからお話を伺うことが出来たおかげで、2日目から最終日まで山や森を思う存分に楽しむことが出来ました。もう一度行ったからいいや、ではなく季節や場所を違えてまた訪れたいと思うことが出来ました。

以上のように、松本さんは主にガイドに焦点を当てて、「分散を妨げるもの」をテーマにお話してくださいました。松本さんの言葉で印象的だったものがあります。「エコツアーは“情報産業”であり、ガイドではない。タクシーではなくて映画のようなものだ。」ただ目的地にまでガイドさんに連れて行ってもらい、写真を取るだけで終わってしまうのではなく、オープニングから地質や気候、植物とのふれあいや、生物の理論を学習するプロセスを踏むことで、クライマックスである目的地ではより多くの感動を得ることが出来るのです。結果としてこれは屋久島リピーターの増加につながり、それはさらに「分散」へとつながっていくと考えられます。「ガイドさんを付けない」という実態、またその原因となる詳しいガイドブックの普及や、観光客の自然を十分に感じる余裕のなさは分散を妨げる一つの要因であるかもしれません。


kanko14

中島 加奈恵


posted by masutanis at 18:02| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | kanko14 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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