テーマは「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」(以下、あの花)の聖地巡礼です。
エスニックメディアでは、近年広まりつつあるコンテンツツーリズムに着目し、その事例として「あの花」の舞台、秩父を選びました。コンテンツツーリズムは、メディアから生まれた観光をさします。このアニメは2011年4月に放送が始まったのですが、秩父市等が協力して、既にいくつかのイベントを開催し、成功をおさめています。
参加者のほとんどが作品を事前に観て、探訪者と同じ気持ちでフィールドワークに臨みました。アニメを見ていない人にはわかりにくいかもしれませんが、ご容赦ください。
当日のコースは
西部池袋駅集合
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飯能駅(ゆきあつ・つるこがここで電車に乗る)
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西武秩父駅(仲見世におみやげ、食べ物屋が多い)
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御花畑(秩父線の駅、西武秩父から徒歩5分くらい)
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皆野(秩父線)
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タクシーで移動
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道の駅・龍勢会館(職員、岩田さんにお話しをきく、手前「あの花」コーナーは無料で見ることができる。奥の龍勢に関する展示から有料。)
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椋神社・櫓見学(じんたん達が龍勢を打ち上げた場所)…龍勢は秩父に伝わるロケット花火です。
↓バスで移動
ふるさと館見学(めんまの蒸しパン、その他あの花グッズ販売。)
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秩父神社(アニメキャラが描かれた絵馬が見られる)
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ほっとすぽっと秩父館(文化財に指定されている家屋を改築。「あの花」に関する展示有り。声優、アーティストのサイン等)
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定林寺(アニメに頻繁に登場する、メインキャラがよく集まる場所)
最初に訪れた龍勢会館には、作中に登場した食べ物やポスターの展示がありました。龍勢は、地域住民が作るロケット花火のことです。吉田町では1年に1回、龍勢を奉納するお祭が開かれています。ちなみに吉田町のあの花スポットは、この会館と櫓(やぐら)だけで、残りは秩父駅周辺に点在しています。
展示は職員の岩田さんが趣味で作ったもので、同じお菓子の袋、ジュースの缶を探すのにとても苦労されたそうです。もともと龍勢、秩父事件の展示をしていたのですが、聖地巡礼目的でやってくるお客さんを喜ばせるために毎日作中の物を一つずつ増やしていたと話してくれました。作品に出たペプシの缶が、今ではオークションで8000円するそうです。
アニメの舞台になったことによって、地元の人の反応や自動販売機の飲み物などが、巡礼者が来ることによって少しずつ変わっていったそうです。逆に、「あの花」目的で龍勢会館を訪れたお客さんが、本来の展示物、つまり秩父事件や龍勢に興味を持ってくれたという事に観光の可能性を感じました。
聖地巡礼地図を手に入れた後、秩父駅周辺を探索しました。雨が強く、電車の本数が限られていたため、思うように歩くことができませんでした。しかし、ほっとすぽっと秩父館、秩父ふるさと館で出会った人達から、「あの花」放送後の変化を聞くことができたのは良い収穫でした。
ご存知の通り、秩父地域はハイキング、札所めぐりなど埼玉県でも観光が盛んな地域です。しかし、「あの花」によって新たな層の観光客が来るようになり、官、民が協力して地域をアニメで盛り上げる体制を作っていきました。配布していた聖地巡礼マップは、秩父アニメツーリズム実行委員会が作ったものです。また聖地巡礼を続けるうちに別の観光資源に関心を持ち、現地との結びつきがつよくなっている様子が、人、町、両方から伝わってきました。
この作品の放送開始から、まだ7カ月しか経っていません。
これから地元と「あの花」がどんな関わり方をしていくのかとても興味深いです。
3年 宮内 香奈恵