2016年02月18日

第一回観光政策フォーラムに参加して

2年小杉です。2月9日帝国ホテルで開催された第一回観光政策フォーラムに参加して
きました。

『観光立国の実現にむけ、「産」・「学」・「官」が行うべきこと』という題での寺島実郎氏による講演後、『観光立国を推進するために、サービス・ツーリズム産業は今、何をするべきか』という題で4名のパネリストによるセッション、という2部構成となっていました。

 寺島氏での講演の要点として以下3つを挙げる。

1 日本の貧困・格差
 貧困・格差と聞くと、発展途上国を中心とする1日1ドル以下での生活を余儀なくされている最貧民層のことを思い浮かべる人が多いと思うが、日本での貧困も実在する。もちろん多くの場合の貧困は、生活保護受給者などの低所得者層に当てはまることだが、寺島氏によると近年、中間層の意識の低下が問題になっているという。
1990年代の「失われた10年」(バブル崩壊後の1993〜2002年)以降進行した、「富の分配構造の変化」によってもたらされた、資産家の没落と低所得者の急増を背景とする「自分はまだ恵まれている」という中間所得者の虚偽意識は、21世紀に入ってからの不景気により崩壊した。また、実際に都市中間層の所得も2000〜2014年の間で10%以上低下している。産業間の就業者移動を見てみると、介護職の人数が約160万人増加しており、失業率としては改善されているが、これらの職は低賃金なものが多く、所得の増加にはつながらず、平均雇用者報酬は減少している。所得の減少は内需の低下に直結し、さらに不景気を招く負の連鎖となろう。
また日本はこれから急速な人口減少・少子化問題に直面する。1966年1億人を突破した後、2008年1億2809万人でピークを迎えた時代のビジネスプランと、2048年人1億人を切ると予想されている現代のビジネスプランが同じもので良いはずがない、という話が印象的だった。

2 アジアダイナミズムとIoT
 アジアが世界GDPの4割を占めるような時代になった。その中での日本の立ち位置は必ずしも優位なものとは言えず、もはや日本がアジアの先頭ではない。1人当たりのGDPを比較してみると、アジアでは4位、世界では27位となっている(2014年)。このような時代の中で、日本はどのようなシナリオを描けば良いのか。食料自給率の改善や工業生産力モデルからの脱却などが考えられるが、寺島氏はこれらに加えて、「実社会融合型ICT」の実現も重要視しているようだ。ビッグデータの進化により、新たなビジネスモデルが続々と登場している。airbnbなど我々観光学部生に馴染みがあるもの多い。日本の企業では、例えばセブンイレブンがオムニチャンネルという流通システムを導入した。人口減少も迎える日本においては、IoTが非常に重要な位置を占めてくるだろう。また氏は、ICTを強化することで高度情報化社会が形成され、これは貧困問題を解決する有効な手段に成り得ると説いていた。

3 新しいツーリズム形態
「観光立国」を目指すには、どうすればよいのか。寺島氏は、医療ツーリズムやインダストリアルツーリズムなどを組み合わせた「ハイエンドの総合型観光」の推進が必要だと説く。例えば、シンガポールは国全体で医療ツーリズムを推している。日本も、自国の強みである技術力を生かした観光が可能であろう。ロボット産業など付加価値の高い高度組立型ものつくりと、医療などの複合分野が重要であると考えられる。
 また空港・港湾整備を促進し、日本をアジア・ゲートウェイにするという国土形成戦略も日本創生・貧困対策に成り得るだろう。

 パネルディスカッションでは、主に人材育成と休暇制度のトピックが扱われた。

1 人材育成
 経営資源として代表的なものに、ヒト・モノ・カネが挙げられる。サービス連合では、ヒトを「サービスを提供し、消費者にホスピタリティを与えるとともに、価値を創造することが出来る唯一の資源である」として、最も重要な資源であると考えているようだ。
 セッションの中で印象的なフレーズとして、「観光産業の懐の深さ」というものがあった。この産業には、自己実現の可能性が多分に含まれているという意であろう。どの分野にも言えることだとは思うが、確かに観光産業には、「好き」という気持ちが強くて足を踏み入れる人も多いように思える。好きだから、人に広めたくなる。そのような気持ちの延長で働くことが出来るならば、理想的な事だ。

2 休暇
 日本の年次有給休暇取得率は欧米と比較し低水準であることは有名である。観光庁において、「POSITIVE OFF」と名付けられた休暇取得・分散化促進運動が推進されている。休日を分散化し、特定日(年末年始など)に旅行代金が割高となり、宿泊を伴う旅行が敬遠される要因を取り除くことが目的なようだ。これらの運動が促進されていく中で、ワーク・ライフバランスの見直しもされていくと考えられる。
 皮肉にも、休暇取得を提言する観光産業で働く人の取得率が非常に低いという現実がある。人にサービスを提供する側の心身の健康が伴わないサービスは、果たして意味のあるものなのだろうかという疑問を抱いた。

〜感想〜
 よく、観光学部に通っていると話すと、楽しそう!という返事をもらう。そんな時、「観光=余暇」という潜在的な価値観の存在が根強いことを感じる。確かに、楽しい。毎日楽しい。しかし、観光学部に身を置く一学生として、見たくないものを見なければならない時、気が付きたくないものに気が付かざるを得ない時があるということを、声を大にして言いたい。(まあこれはどんな学問でもそうなのかな。でも、観光学部は楽しそう!と思われる分、ギャップが大きいのかなー。)私は最近、観光学部での学びは、「モノの見かた」の形成に役立つのではないかと考えている。観光という社会現象は、あらゆる視点で観察することが出来、そこには様々な解釈が生まれる。この多様性が、前述した「観光産業の懐の深さ」に直結するのかとも思う。もはや普通の観光では満足出来なくなってしまった学生も多いのではないか。その学生の一人として、今後も「気が付ける目」を養っていきたいと考える。

2年 小杉
posted by 14こすぎ at 18:13| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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